視察報告-大牟田市・熊本市

出張者:秋広正健

 

【日程】   2018年1月18日(木)13:30~14:30

【場所】   大牟田市役所

【対応者】  大牟田市都市整備部建築住宅課 課長 他 、 大牟田市都市整備部建築指導課 主幹 他



【調査内容】 空き家等対策について

(1)空家等の現状

 大牟田市の「空家の数と空家率の推移」、「空家の種類別動向(売却用住宅賃貸用住宅、二次的住宅、その他の住宅)」について。
 また、「相談件数」と「解決件数」の推移。


≪空家の数と空家率の推移≫

空家数(戸) 空家率(%)
昭和58年 4,870 9.1
昭和63年 5,100 9.6
平成 5年 5,300 9.7
平成10年 6,820 12.0
平成15年 6,900 12.1
平成20年 9,360 15.6
平成25年 9,510 16.2



≪空家の種類別動向(売却用住宅、賃貸用住宅、二次的住宅、その他の住宅)≫

売却用住宅 賃貸用住宅 二次的住宅 その他住宅
平成15年 250 3,220 180 3,240
平成20年 890 3,360 90 5,020
平成25年 150 3,710 250 5,400



≪空家の相談件数と解決件数の推移(過去5年)≫

相談件数(件) 解決件数(件)
平成23年 35
平成24年 48 13
平成25年 57 14
平成26年 71 27
平成27年 102 23

                            ※年々増加している
 

(2)空家等対策の実施体制
 空家等対策は、建物の適正管理だけでなく、樹木や雑草の繁茂、防犯、防火、不法投棄への対応など、他分野にわたる問題だが、対策の実施体制。  

実施体制 内容 構成メンバー
大牟田市空き地及び空家等対策審議会 対策計画の作成及び変更、実施に関する協議等 学識経験者、関係団体の代表、
消防、警察等
大牟田市空き地及び空家等対策検討委員会 相談体制の整備等、空家等対策を総合的に推進 庁内の関係課の課長
(建築、環境、福祉等)
福岡県空家対策連絡協議会 県内で一定的な空家対策を推進 県(関係課の課長)、市町村、
関係団体
大牟田市居住支援協議会 民間賃貸住宅等への円滑な入居を促進 行政、不動産関係団体、
居住支援関係団体

    

(3)計画に基づく対策(計画全般について)

●29年3月の対策計画策定による効果。
・庁内の連携が確立され、また、関係課の認識も高まった。
・空家等への指導は、これまで任意の指導であったが、条例制定(29年4月)によって、条例に基づく指導となり、対応がスムーズになった。


(4)特定空家等と特定空き地対策
①空家等対策特別措置法においては、「特定空き地」、「準特定空家等」、「準特定空き地」の定義はないが、大牟田市独自の取り組みか。
⇒空家特措法では措置の対象とならない状態の空き地や空家等に対して、条例に基づき行政指導ができるように「準特定空家等」、「準特定空き地」を位置付けた。

②応急的に必要最低限の措置を講ずることができる緊急安全措置を規定しておられますが、これまでの対応内容。
⇒ 職員が、がれき等を敷地に入れる対応を行った。

(5)空家等の流通・活用対策
空家を地域活性化のための交流施設や文化施設に活用する場合の補助制度。
⇒地域の活性化やコミュニティ再生等を進めること等を目的に、「大牟田市民間空家等利活用促進事業」を実施している。

 ◆地域拠点活用タイプ
 ・福祉の向上に資するもの(高齢者グループホーム、シェアハウスなど)
 ・子育て支援に資するもの(子供食堂、託児所など)
 ・地域の活性化に資するもの(交流サロン、ゲストハウスなど)
 ・緊急事態に資するもの(DV対応シェルターハウス)
 ・その他市長が認めるもの

 ◆補助金の額
 ・要綱で定める補助対象の費用の2分の1(100万円上限)

 

(6)民間空家利活用・改修学生コンペを実施。
①コンペを実施することとなったきっかけと目的。
・市長の発案から、職員提案を募集し、コンペを実施することとした。
・空家等の活用及び流通促進が課題であったことから、本コンペについてホームページ等で情報発信することで、空家の流通促進を図るとともに、「民間空家等利活用促進事業」の情報発信も合わせて行った。

②対象とした空家は民間所有か。
・民間所有

③「応募件数」、「審査体制(構成メンバー)」、「空家が民間所有の場合は所有者の意向の反映の仕方」について。

(応募件数)
  ・地元高専と全国各地(東北、関東、近畿、北陸、九州)の各大学から、26点の応募

(審査体制)
 ・審査委員長:東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授
 ・審査委員 :近畿大学建築学部教授
       :熊本県立大学環境共生学部居住環境学科准教授
       :大牟田市副市長
       :所有者

(所有者の意向の反映の仕方)
 ・審査委員に所有者を加えて意向を反映した。
  
④審査の結果、提案の趣旨を活かした改修工事の予定。
  ・最優秀賞の内容をもとに、改修工事を行うこととしており、29年度中の完成を目指している。

⑤コンペを実施された効果。
 ・市による広報だけでなく、新聞等で複数回取り上げられ、空家を持つ市民へ空家が利活用できることを広く周知できた。
 ・イオンで開催した表彰式と同日開催の「空家活用セミナー」に約80人の来場者があり、空家活用の認識を高めることができた。
 ・最優秀賞の内容をもとに、空家を利活用できる。



 ≪所感≫
(1)市長の全職員による施策づくりから具体的な事業化まで進めていることに感銘を受け、本市も見習うべきであると思った。大牟田市の取り組みを参考に本市の具体的な事業化につなげていきたい。

(2)空家等の活用対策として、地域の活性化やコミュニティ再生等を目的に「大牟田市民間空家等利活用促進事業」を進めている。本市も地域拠点活用タイプ等の補助制度を実施すべきである。

(3)空家の利活用の事業を具体的に進めるには、各局との連携が必要であるため、実施体制の整備が必要である。

(4)上記(2)、(3)については、本市の課題として取り組むこととする。


 

 

【日程】   2018年1月19日(金)10:00~11:00


【場所】   熊本市「まちづくりテラス」

【対応者】  

       熊本市都市建設局都市政策部都心活性推進課 技術主幹、主任技師
       熊本市経済観光局新ホールマネジメント課  技術主幹


【調査内容】 桜町・花畑周辺地区のまちづくり


(1)桜町・花畑地区の現状および目指すべき姿

①整備前の当該地区の現状と課題について
⇒当該地区は2つの大きな商業核の1つとして中心市街地のにぎわいを創出する場所として発展してきたが、地区内にあるバス交通の拠点である交通センターの老朽化や、中心市街地全体における歩行者交通量の減少などが見られる。このようなことから、施設のバリアフリー化や地域全体における回遊性の向上が課題となっている。

②熊本城と庭つづきの「まちの大広間」をコンセプトに、周辺4地区をつなぐ「かすがい」として当地区に求められる将来像について。
⇒当該地区は、熊本城をすぐそばから望むことができ、歴史性や景観的特性を有しており、交通アクセスに優れ、文化施設も充実し、中心市街地としても集客力が特に高い地区特性を有している。このようなことから、シンボルプロムナードやMICE施設の整備によって、拠点性の向上や新たな魅力創出、安全安心で快適な歩行空間を確保し、活力と賑わいに満ちた上質な空間形成を行い、連携を図ることにより、熊本駅周辺地区などとの結節機能を強化し、回遊性の向上も図られ、中心市街地全体へ波及することが期待される。

③平成28年の熊本地震のあと、当初の計画から当該地区のコンセプトや施設設置の考え方に対する変化は。
⇒熊本地震では、広域交通拠点である当該地区においても、多くの避難者や帰宅困難者が発生し、前提が大きく変わったところである。
災害時においても、生活利便性を確保する拠点として機能するよう、施設機能の維持、早期回復を図ること、また、広域交通拠点としてエリア全体で防災・減災機能の強化に取り組むなど、「くまもと」のフロントランナーとして、コンセプトを設定し、平常時よりハード・ソフト両面から備えておくことが重要であり、施設やオープンスペースの適切な配置と整備に取り組むこととなった。

(2)シンボルプロムナードについて
①熊本城へつながる歩行者空間として整備することによる車両や歩行者の流れの変化と魅力的な空間形成を図るために特に工面された点。
⇒歩行者については、周辺地域から自由にアクセスできる動線やその結節点にたまり空間を設置するとともに、熊本城への眺めを楽しみながら歩ける快適な歩行者動線を確保し、日常的にも賑わいがうまれる自由度の高い空間を形成する。
また、自動車については、シンボルプロムナード内に動線を設けず、外周道路で処理することにより、人が主役のシンボルプロムナードとして位置づけることとしている。
  
(3)MICE施設(熊本城ホール)の整備について(H27~H31)
①施設整備に至った背景、整備目的、施設規模の設定
⇒市は、政令指定都市でありながら、3千人から5千人規模のコンベンション開催が可能な大規模施設が市中心部になく、他都市と比べ移動ロスや施設利用料金面において不利であった。
 このようなことから、政令指定都市としての競争力を持ち、九州中央の交流拠点として発展するために当該地区を核として中心市街地の再デザインを進めることを目的としている。
 また、施設規模は、市内中心部における大規模コンベンション、コンサート、会議等の需要を踏まえ、2千人から5千人規模とした。

②現在の整備の進捗状況。
⇒29年2月より再開発事業の建設工事に着手し、31年の夏の完成を予定。
 シンボルプロムナードや仮称花畑公園などの整備については、再開発事業の竣工後本格的な整備を行う予定である。

③施設整備にあたり費用対効果の検討を踏まえた供用後の施設の管理運営手法。
⇒懇話会や利活用に関するアンケート調査をもとに、熊本城ホールの運営戦略方針の検討を行った。(方針は以下)
 これらの検討を踏まえ、29年9月には、熊本城ホール条例を策定し、指定管理者制度を導入することとして10月より募集、審査等を踏まえ、熊本城ホール運営共同事業体を候補者として選定したところである。

※運営戦略方針   

 再開発ビルとの連続性の確保、開館時間の柔軟性、周辺他都市を勘案した利用料金設定、催事に応じた適切な予約対応、事業内容の精査、地域一帯を見据えた指定管理者の検討、分析に基づく的確な誘致活動、開催助成金の周知と金額精査への取り組み、地域が一体となった受け入れ体制の構築


(4)景観デザインについて
①熊本城につながる大広間として空間デザインの調和を図るために重視した点、規制誘導項目を具体的に取り入れるための方策、これまでの手続きについて
⇒まちづくりマネジメント基本計画において、熊本城につながる大広間としてのゆるやかな全体性と様々な場面を作り出す多様性の両立を基本理念としており、具体的な方策については、熊本城が美しく見える眺望点の確保や、建築物の高さ制限、壁面後退等の規制を行うことにより、良質な空間の形成に取り組むこととしている。
 また、有識者等で構成された「デザイン調整会議」を設置し、デザインガイドラインを運用しながら、「桜町・花畑周辺地区まちづくりマネジメント検討委員会」に対してブラッシュアップする点など発議していくこととしている。
 
(5)構想の実現に向けた取り組みについて
①まちづくりマネジメントに関するこれまでの経緯、今後の展望や課題について。
⇒魅力的な空間の形成と中心市街地全体の回遊性向上や賑わいの創出を図るため、平成24年3月に「熊本城と庭つづき『まちの大広間』」をコンセプトに「桜町・花畑周辺地区まちづくりマネジメント基本構造」を策定した。また、26年7月には、「まちづくりマネジメント基本計画」を策定し、利活用、空間・景観デザイン、運営管理を総合的に捉え、一体的に計画・誘導・整備を行う仕組みと体制を構築し、将来にわたって持続・発展することを目指すことを方針に設定したところである。
 今後は、桜町地区の再開発事業やシンボルプロムナードの段階的な供用に向けて、計画、準備、運用に適した体制を段階的に構築し、これを推進していく必要がある。

②中心市街地の活性化にも当該プロジェクトは大きく寄与すると思われるが、にぎわい創出するために人を呼び込む具体的な施策について現時点における検討。
⇒オープンスペースにおける利活用については、365日さまざまなアクティビティが行われることにより賑わいを創出することとしており、具体的には、火の国まつりや熊本城マラソンなど大きなイベントの開催、憩いたまり空間、ケータリングカー、オープンカフェ等による長期間や日常的な催し、熊本城ホールと連携したその他イベントの開催などにより賑わいを創出する予定である。

 

≪所感≫

 桜町・花畑周辺地区は、熊本市の商業核の1つであり、中心市街地のにぎわい場所として発展してきたが、地区内のバス交通拠点である交通センター等の老朽化や中心市街地全体における歩行者交通量の減少などが見られるようになった。
 また、この地区は、熊本城を近くから眺望でき、歴史性や景観的特性を有し、また、交通アクセスも優れ、文化施設も充実し、中心市街地として集客力が特に高い地区としての特性を有している。
 このようなことから、シンボルプロムナードは、熊本城につながる歩行者空間として、周辺地域から自由にアクセス可能な動線やその結節点にたまり空間を設置し、熊本城を眺め楽しむことができる快適な歩行者動線を確保することで、日常的にも賑わいが生まれる自由度の高い空間の形成を図ることとしている。
 また、自動車については、シンボルプロムナード内に動線を設けず、外周道路で処理することにより、人が主役のシンボルプロムナードとして位置付けている。
 施設については、MICE施設や観光、ビジネス客の宿泊施設、地区の商業施設、交通センターなどを集約することで、集客力を向上させる核の整備を検討している。
 上記の取り組みについては、熊本城への眺望を主眼に置いたまちづくりが進められており、今後、本市においても、桜島や錦江湾への眺望を主眼に置くまちづくりの観点も必要であることから、現在、県で検討されている本港区においても、この取り組みを生かしていくべきであると感じた。

 

 

 

2018年03月09日