視察報告-熊本市・宗像市

出張者:秋広正健・ふじぼ博文・中原ちから・平山タカヒサ


【日程】   2019年10月21日(月)14:00~22日(火)12:00



【場所】   熊本市


【調査事項】 研修会
(1) 講演「辺野古米軍基地建設のための埋め立て賛否を問う県民投票」について
               沖縄県議会議員 宮城一郎
(2) 分科会 ① 第1分科会 ⅰ)指定管理者制度と人員合理化の結末
                    宮崎市議会議員 松田浩一
                 ⅱ)公共交通問題について
                    佐賀市議会議員 松永憲明
        ② 第2分科会 ⅰ)スマートステーションに対する取り組み
                    大分市議会議員 甲斐高之
                 ⅱ)指定管理者制度の宮崎市立田野病院
                    宮崎市議会議員 徳重淳一
        ③ 第3分科会 ⅰ)交通政策について
                    鹿児島市議会議員 平山貴久
                 ⅱ)放課後児童クラブの課題について
                        佐世保市議会議員 永田秀人
          ④ 第4分科会 ⅰ)性的少数者への支援の取り組み
                        臼杵市議会議員 匹田久美子
                     ⅱ)母子支援センターの取り組み
                    朝倉市議会議員 大庭きみ子
        
【概要】

(1) 講演「辺野古米軍基地建設のための埋め立て賛否を問う県民投票」について
                            沖縄県議会議員 宮城一郎
① そもそも辺野古米軍基地建設とは
 沖縄県宜野湾市にある普天間基地(普天間飛行場)は、太平洋戦争で沖縄が占領された直後に日本本土への攻撃の拠点として米軍が建設した滑走路から生まれました。しかし、戦後に飛行場周辺に民家が建ち商業活動も盛んになっていったため、結果的に市街地の真ん中に滑走路がある形になって、戦闘機が訓練や燃料補給のため頻繁に離着陸するため、周辺の住民は爆音に悩まされ墜落事故などの恐怖に怯えていて、このことから「世界一危険な飛行場」と言われています。また、1995年9月に米兵少女暴行事件が発生したことで、普天間基地の移設問題がクローズアップされました。日米両政府は「沖縄に関する特別行動委員会(SAKO)設置し沖縄米軍基地の整備・縮小・統合などの検討を始めました。1996年の当時の橋本首相とビル・クリントン米大統領が普天間基地の返還と移設に合意。1999年当時の稲嶺知事が移設先を名護市辺野古海域と表明。当時の岸本名護市長も条件付きで受け入れを表明。但し、稲嶺氏は「期間15年限定で軍民共用飛行場を作る」、岸本氏は「地域振興とセット」ならOKと言う条件でした。米軍は「15年限定はあり得ない」と合意せず、日米両政府は地元沖縄の意見を無視して、2014年完成予定の辺野古v字滑走路案を合意しました。2004年8月に普天間基地の米軍ヘリが宜野湾市にある沖縄国際大学の構内に墜落する事故が発生し、沖縄側の反対が再び巻き起こりました。その後、当時の島袋名護市長が「住宅の上空を飛行しないこと」条件に合意し、基地建設容認派の仲井眞弘多氏が県知事に当選しました。しかし、2008年の沖縄県議会では辺野古移設には反対決議、2009年、当時の鳩山首相の「最低でも県外」発言、2010年、辺野古移設反対の稲嶺進氏が名護市長選で当選など揺れていましたが、2013年末、安倍政権下で、最終的に公有水面埋立を承認しました。しかし、2014年11月に建設反対を掲げていたオール沖縄の翁長氏が沖縄県知事に当選すると、再び事態が変化しました。辺野古埋立違法確認訴訟など繰り返されました。判決では、永年の沖縄の基地過重負担、各級選挙の民意を認めながらも、沖縄の基地負担軽減に資するとして、新基地反対の民意に沿わなくても、基地負担軽減を民意に反するとは言えないと結論付けました。国の勝訴により、2016年11月に工事が再開しました。

② 県民投票の種類
 県民投票には、A 知事が発議して議会が判断する形、B 議員が提案して議会に諮る形、C 住民による直接請求で知事が議会へ諮る形があり、翁長知事の考えに近い手法は、Cでした。

③ 「県民投票の会」発足し活動開始
 辺野古基地建設に伴う埋め立て工事の是非を問う県民投票の実施を目指している「辺野古県民投票の会」元山仁士郎氏(26)を中心に、34人が名を連ね沖縄県に対して、住民投票実施請求書を提出しました。県民投票は条例制定が必要で、地方自治法では、署名期間を開始から2か月、有権者の50分の1(約23,000筆)が必要としています。 一方、翁長知事を支えるいわゆるオール沖縄の中でも、市民運動家や保守グループ、無党派層など県民投票のメリットについて意見が分かれました。また、期間中に翁長知事の死去や県議会での条例制定に対して、5市が事務受託拒否の動き等ありましたが、県民の熱意が後押しをする形で県民投票が実施されました。
    
④ 県民投票の結果とそれに向き合うべきは「ヤマト」
      住民投票の結果 当日の有権者 1,153,591人
              投票総数 605,385票 投票率 52.48%
              有効投票 601,888票(99.42%) 無効票 3,497(0.58%)
               ・埋立賛成 114,933票(18.99%)
               ・埋立反対 434,273票(71.74%)
               ・どちでもない 52,682票(8.70%)
 以上のような結果を巡り、政党間でも対応が分かれていますが、有効投票の約72%の有権者の方々が辺野古新基地建設に反対していることが明らかになりました。
 一方で、2015年の内閣府による国民の意識調査によると「日米安全保障条約が日本の平和と安全に役立っていると思うか?」という設問に対して、役立っている38.5%、どちらといえば役立っている44.4%と合計で82.9%の国民が「役立っている」と回答していることが分かっています。一体どれくらいの日本国民が、日米安全保障条約やその第6条に基づく略称日米地位協定についての不平等さを理解しているのか甚だ疑問です。また、辺野古埋立についても、本来の行政手続きで言えば特別措置法の制定が必要となる行為を行政処分としての閣議決定だけで実施している現実を認識しているのかが、日本国民が問われています。


【所感】
 辺野古基地建設については、断片的には理解しているつもりでしたが、系統的に経緯やや経過について学習する機会を得ることができました。根底にあるものは、不平等条約であるところの日米安全保障条約であり、それに基づく日米地位協定であることが十分に理解できました。簡単に沖縄県民の心に寄り添うと言う前に、日米安保条約や日米地位協定の改正などハードルは高そうですが一つ一つ論議を重ね、課題や問題点を国民の前に明らかにしていき、国民の総意としての日米安保や地位協定の改正を進めなければこの問題の解決には至らないと思う。

 

◆第1分科会報告◆ 

第1分科会では、「指定管理者制度と人員合理化の結末」、「公共交通問題」について各自治体・議会での取組が報告され議論が行われた。以下について報告する。

〇指定管理者制度と人員合理化の末路について(報告者:松田浩一宮崎市議会議員)

 2018年度宮崎市一般会計決算の決算審査で、指定管理者管理の宮崎白浜オートキャンプ場で消防法に規定されている消防施設の点検が行われておらず指定管理料返還金119,400円が計上された。返還金は過年度(2015~2017年)にわたっていた。市当局の説明等も不十分で議会も混乱し、結果として決算が不認定とされた。

【所感
宮崎市の公の施設の指定管理に関する基本方針通りのチェックが長年履行されていないが、チェックが不十分なのは、チェックをする側の職員の技量もなくなりつつあることも問題のひとつだと考える。人材育成と議会のチェック機能が試されている。


〇佐賀市の公共交通問題――中山間地域における取組(報告者:松永憲明佐賀市議会議員)

 佐賀市は二度にわたる市町村合併を経て、現在人口は232,773人、面積は431.84㎢である。佐賀市も全国的傾向と同様2060年は人口が現在の3分の2まで減少することが予想されている。また、公共交通を取巻く状況も、昭和時代に4千万人近くだった輸送人員が1千万人前後まで減少している一方、乗用車の保有台数は年々増加している。市内は路線バス、コミュニティバス、タクシー等で交通網が形成されているが、北部山間地域で利用者の減少や、運転士の高齢化などの理由で、昨年9月に運行事業者から市に路線廃止の申入れがなされた。富士町では公共交通活性化協議会を設置し、代替策の検討を始め、乗降調査、移動手段確保策、先進地調査など行い具体的な運行形態を検討している。

【所感】
 来年4月1日運行開始を目指しているが、特徴として、利用目標を設定し、運行後も随時見直しを行うことと併せ、大型二種免許取得に補助金制度を設け、後に、市営バスに採用することとしている。地域で公共交通を支えようとする機運を高めることは本市にとっても大事な観点として参考にすべきと考える。


◆第2分科会

(1) 公共交通について~JR九州スマートサポートステーションについて考える~
   発表者:大分県議会議員 守永 信幸
       大分市議会議員 甲斐 高之

【概要】
 JR九州は、2018年3月17日ダイヤ改正により、減便と併せて大分市内の8つの駅を新たに無人化し「スマートサポートステーション(以下SSS)」を導入。しかし、無人化された駅の利用者等からは、朝夕の混雑時には、不安な気持ちで駅を利用している、誰もいない時間帯になにかあったらと危険性を感じている、駅員さんがいないので、暗くなってからの治安が心配などの不安の声が上がっている。また、列車の運転手からは、車内での急病人などの発生に迅速に対応できない、無線連絡をしても最寄りの駅で早期の対応ができないことなになり、運転に対して不安が増加するなどの声が上がっている。この現状に対し、2018年10月16日、民間団体から、「JR駅の無人化等に関する要望書」が7万2,466筆の署名を添えて提出されている。また、大分県議会において関連の質疑が交わされており、大分県知事は「安全性・利便性の向上についてJR吸収との連携をさらに深めていくことが重要と考えている」との見解が示されている。

【所感】
 本市においても、2020年5月より、指宿枕崎線で11駅のSSS導入がJR九州より示されている、大分の事例のようなことが、本市でも起こる可能性がある。ただ、議論をすすめる上で、重要なのは、事業者だけに責任をもたせるのではなく、地域の住民や行政機関等と連携し、安全対策や公共交通の利用促進を図っていく必要性があると考える。


(2) 指定管理者制度の宮崎市立田野病院
   発表者:宮崎市議会議員 徳重 淳一

【概要
 宮崎市立野田病院は、2015年4月より、宮崎大学医学部が指定管理者として運営を行っている。医師確保が難しく赤字経営が続いており、その解消のための制度導入であったが、制度導入後も医師確保ができず赤字経営が続いている。そのため、2016年度より宮崎市の一般会計から3億円の貸付が決定、当初、2018年度までの黒字化の計画も2019年度に先延ばしになっている。指定管理者制度に移行した場合赤字となっても経営に関し行政側が口の出せない現状、施設管理のチェック体性がとれなくなっている現状が生まれている。

【所感】
 指定管理者制度については、制度創設以来16年が経過し、全国で様々な課題や問題が惹起されている。宮崎の事例のように、指定管理者制度だから行政が口出しできない、チェック体制が取れなくなっている状況は、あってはならないことであり、問題や課題等があれば行政としてその責任のもとに、適正な運用になるように務めるべきであると考える。また、議会においても、どのような審査をされたのか疑問が残るところである。


(3) 公共交通に関する熊本市の取り組み
   発表者:熊本市議会議員 田上 辰也

【概要】
 熊本市のバス利用者はピーク時(昭和50年代)の約1/4、直近の10年間で30%減となっており、利用者の減少による交通事業者の経営悪化、サービス水準の低下などの課題がある。そこで、熊本市は、平成24年3月、熊本市公共交通グランドデザインを策定、平成25年4月に熊本市公共交通基本条例を制定し、少子高齢化・人口減少・地球環境問題などの、今までに経験したことがない大きな社会構造の変化に対し、エネルギー消費を抑えた都市構造・過度に自家用車に頼らない生活の転換を目指している。その中で、期間となる公共交通(鉄道、市電、バス)の輸送力の強化や定時の確保の一環で、バス路線網の再編を行い、各系統の役割の明確化、時刻表等の統一などバス事業者の枠を超え、わかりやすく、実現性の高いバス路線の構築に成功している。また、公共交通空白地域において、バス路線でカバーできない地域では、地域と連携し、タクシー車両等を活用した、新たな公共交通を導入している。

【所感】
 本市でも課題になっている、市営バスの経営健全化であるが、熊本市においては官民の協力連携が構築されていることに感銘を受ける。話を聞くところによると、このように協力連携体制が構築できたのも民間バス事業者に対し市の方から負担金を拠出していた影響が大きいとの事。また、公共交通空白地域の対策については、市域内をほぼカバーしているという話であったが、やはり今後の課題として、利用者の低迷をあげられた。このことは本市でも同様であり、多様化する利用者ニーズに、どのように対応し公共交通の存続を図っていくかが重要だと考える。



◆第3分科会

(1)交通政策について
    鹿児島市議会議員 平山 貴久



【概要】
 高齢化の急速な進行、環境問題の新奥化への対応といった社会的要請に応えるため、コンパクトな市街地を形成する集約型都市構造の実現に向け、市民・交通事業者・行政等が一体となって取組む推進計画となる「鹿児島市公共交通ビジョン」を2010年3月に策定。
 2015年8月26日の「地域公共交通活性化及び再生に関する法律及び独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法の一部を改正する法律」や「かごしまコンパクトなまちづくりプラン」、「集約型都市構造に向けた土地利用ガイドプラン」で定めた誘導区域や拠点を中心市街地と交通ネットワークで結ぶという考えのもとで、「公共交通網形成計画」との位置づけを盛り込み、2017年3月に改訂。基本理念「公共交通を活かした 歩いて楽しむ緑のまち“かごしま”」

  基本方針1「利便性・効率性の高い、持続可能な交通体系の構築」
  主な取組  谷山地区や鹿児島駅サブターミナルの整備。交通不便地対策として
        コミュニティバスやデマンド型の乗合タクシーの導入

  基本方針2「安全・快適で、人と環境にやさしい交通環境の整備」
  主な取組  車両や待合施設等のバリアフリー化やコミュニティサイクルの運営。

  基本方針3「特色ある公共交通を活かしたまちづくりの推進」
  主な取組  桜島フェリーをクルーズ船として、路面電車を環境電車として活用

【所感】
 持続可能な交通環境の整備について、佐世保市では市営バスが廃止され民間のみの運行となっている。しかし、運転手の賃金水準が低いため運転手不足であり、路線の維持が大とのこと。熊本市においても、競合している民間の路線の住み分け協議が整い、現在円滑に運行されているが、運転手不足の課題等から、将来的には経営統合を見据えた再改編も必要ではとのこと。
 公共交通の存続には、運転手の処遇改善や路線維持のための国等からの大胆な支援なしには、基礎自治体任せでは限界があることを実感した。


(2)放課後児童クラブの課題について
    佐世保市議会議員 永田 秀人
【概要】
①現状
 ア)クラブ数
  2011年4月50小学校区中35校区に44か所設置→2019年4月全校区73ヶ所設置。

 イ)当事者団体
  保護者や社会福祉法人、学校法人など運営主体は、クラブ毎で異なる。放課後児童クラブ連絡協議会があるが、
  参加クラブは一部。連絡協議会の運営を担う負担増を敬遠。

 ウ)利用料のばらつき
  児童クラブへの行政からの支援は拡充されてきているものの、クラブ毎の運営主体の多様性が制度面にも影響。
  利用料にクラブ間のばらつきがある。
  市として「月額1万円」を基準としているが、それ以下の設定も多数存在。

②課題
 ア)支援員の処遇改善
  勤務時間が午後に設定されるため短時間となり、手取りが低く社会保険未加入のため
  人材確保・定着にマイナス。

 イ)利用料の統一と適正負担
  利用料について、市から目標とすべき基準は示されているものの強制できず、各クラブの
  判断任せ。運営主体によって負担額が異なることは不公平。支援員の待遇改善のためにも避けて通れない課題

【所感】
 放課後児童クラブを保育所や幼稚園など未就学児童向け事業所が引き続き受け入れたり、保護者が自主的に任意団体を結成し立ち上げたものなど様々な成り立ちがあり、現在に至っている。
佐世保市では、運営主体毎の運営が尊重されている反面、行政全体としての統一性が図られていない。市として統一的な利用料の設定と行政による補助(委託等)制度を設ける必要がある。議会の場で指摘すべきと考える。


◆第4分科会◆

ⅰ)性的少数者への支援の取り組み
   臼杵市議会議員 匹田久美子

【概要】
 性の多様性について、身体の性・心の性(性自認)・好きになる性(性的指向)などを組み合わせていくと、様々形が存在することが分かり、従来のいわゆる「LGBT」と言う枠組みだけではなく「SOGI」(Sexual Orientation and Gender Identity)直訳すると、「性指向と性自認」となります。LGBTは性的少数者を指す言葉ですが、SOGIは性的指向と性自認を指す言葉なので、性的少数者だけを指しているわけではありません。一方で、性の多様性は広がっているのに施策は深まりません。市民への広報啓発の必要性を指摘したことで、まず市職員への研修が実現しました。大分県は922件の文書の内257の文書の性別記載欄を削除しました。本市でも可能な限り取り組むよう求め、来年度から順次取り組むと約束しました。
 このような動きの中で、鹿児島市議会9月議会での「LGBTに対する誤った理解や偏見に基づく差別発言」が起こりました。新聞報道や「指宿市・鹿児島市LGBT交流会レインボーポート向日葵」のホームページを見ると、差別を助長する発言で当事者や子どもたちが受けたショックは計り知れず、人権について、正しい知識の習得に努めなければならない。

【所感】
 パートナーシップ制度の導入の動きが各地で広がってきている中での鹿児島市議会での発言については、多くの方々から疑問の声や厳しい意見が出されました。議会を構成している者として、経緯や結果等について丁寧に説明してご意見をお聞かせ頂いた。鹿児島市における人権啓発について、改めて考えなければならないと強く思いました。

ⅱ)母子支援センターの取り組み
   朝倉市議会議員 大庭きみ子

【概要】
 2017年7月5日の九州北部豪雨災害では、9時間で774ミリという観測史上最大の豪雨となり、死者33人、行方不明2人、全壊家屋約260戸、半壊・一部損壊約1500戸となり、災害直後は約1200人が開設された11カ所の避難所に身を寄せました。避難所を回りながら乳幼児を連れた母親を見ながら、災害弱者である母子支援の必要性を感じ、実行委員会を立ち上げ「朝倉災害母子支援センターきずな」開設しました。①母子、又は女性の避難所として(延べ237人が利用)②女性ボランティアの宿泊・拠点として(延べ143人が利用)③母子、女性と子どもの相談・支援の3つを柱として助産師や弁護士、人権擁護委員や元養護教諭などが毎週曜日を定めて相談にあたりました。また、講演会や演奏会、子ども達のプレーパーク(冒険遊び場)の開設や支援物資の仕分け・配布の拠点としても活用されました。全国初の取り組みとして、平成29年度の「福岡県防災賞」や平成30年度の福岡県男女参画表彰「困難な状況にある女性の自立部門」を受賞し、全国各地から1000人を超える視察があり、講演会にも伺っています。まだまだ復興は道半ばであり、被災者に向き合ってできる支援を継続していき、新たな産前産後ケアハウスとして、持続可能な運営を目指して取り組んでいきたいと考えています。

【所感】
 10数人の女性たちが立ち上がり、ボランティアの女性たちが市内外から駆け付けて、たまたま空いていた産婦人科医院を無償で借りられたことなども良かったと思われる。ただ、行政は自主的避難所を運営するボランティア団体には一切費用負担をしないということには驚いた。結果として日本財団やライオンズクラブなどの寄付を頂いたようですが、何らかの行政の援助ができないものか考える必要があると思います。鹿児島市においては8.6豪雨災害以降に長期間にわたる避難所生活はあまり例が無く、作成されている「避難所運営マニュアル」が機能するのか検証してみる必要があると思います。

 

 

 

【日 時】  令和元年 10月23日 9時00分~11時30分

【場 所】  福岡県宗像市 宗像市役所

【応 対】  宗像市 都市建設部 都市再生課長
                  都市再生係職員

【調査内容】 団地再生の取り組み

【目 的】
 近年、本市においても人口減少の波が押し寄せ、その対応が迫られている。住宅団地においても、人口減による、商業施設や交通機関の撤退や、地域コミュニティの衰退が進んでいる中で、住宅団地の再生が急務であり、本市としても平成29年度より団地再生事業をスタートさせているところである。そこで、宗像市においては、平成25年度から団地再生に取り組んでおり、進んでいることから具体的取り組み状況とその効果等を調査した。
 
 
1、まちづくりの課題
 昭和40年代に国鉄鹿児島線の電化等に伴い、大規模な住宅団地の開発により人口が伸び続けてきた。しかし、今後は人口が減少へと展観することが推測されており、人口減少に伴う住環境の悪化や地域活力の低下が懸念されている。

2、団地再生の方針
 昭和40年代に開発された大規模住宅団地(日の里、自由ヶ丘、城西ヶ丘、光ヶ丘)における居住者の高齢化や人口減少、空き地・空き家の発生や居住環境の低下が懸念される区域や駅から離れた区域については、街区の再整備や住替えを促進する。「住むマイむなかた」などと連携し、空き地・空き家情報や住替えの提供、老朽化した住宅の建て替えを促進する。
   
3、団地再生の具体的取組状況
(1) 東郷駅前活性化事業(日の里)
 「CoCokaraひのさと」は地域資源の一つである⑦年間錆びついたままの駅前空き店舗をリニューアルし、住民が主体となって地域の賑わいを生み出す場として2016年8月に誕生。年間2万5千人が利用し、地元連携の展示、講座の開催、住民企画のサークル、交流会などで利用されている。また、若者に地域での役割を感じてもらうため、まんじゅうづくりや、小中高生に学習ルームの開放なども行っている。宗像市として事業支援しており、今後、独立採算で運営を継続していくことが課題である。



(2)団地の農場 日の里ファーム(日の里)
 平成24年4月、UR都市機構が、「食と農によるコミュニティ活性化をテーマに」団地内にある農業施設を設置。日の里地域の住民約30人が加入し「農場 日の里ファームクラブ」を設立し、朝市イベントの開催や小売店、直売所等への出荷、日の里地区内保育園や小学校への給食への出荷、子どもたちの農業体験、多世代交流の場として活用されている。



(3)まちなか再生整備事業
 宗像市立地適正化計画の都市機能誘導区域において、官民連携による快適で多様な住宅用地の供給及び良質な公共施設の整備をすすめることで、居住人王の増加及び都市機能の集積を図り、集約型都市機能の形成を促進する。

対象要件:都市機能誘導区域で面積が2ha以上の区域
     公共用地をすべて市に帰属すること
     施工後の公共用地率が15%を超えていること
     生活サービス機能を1つ以上誘致すること
     ※商業機能、医療機能、介護福福祉機能、子育て機能など

対象施設:道路の舗装及び側溝
     公園、緑地又は広場
     下水道施設、消防施設など

助成額:対象施設の整備費の総額の3分の1
    1地区の最高限度額は5千万円

(4) 定住支援制度



<所感>
 本市でも団地再生推進事業として、市域内の住宅団地の再生がスタートしたばかりである。その第一歩として団地の現状調査や状況別の区分け等を経て、現在、選定された3団地においてワークショップや講演会を開催しているところである。
 そこで、居住住民の理解と合意形成をどうのように図ってきたのかお聞きしたところ、住民アンケートは、区域内の自治会に謝礼を払い行ってもらい、コスト削減とはじめからまちづくりに関わることで、機運の醸成を図ったそうだ。自治会に任せることにより、アンケートの回収率は9割を超え、より詳細な情報収集ができたとのこと。また、地区コミュニティ運営協議会や大学・医療機関との連携を図る中で、既存のコミュニティに加入していない住民からも参加者を募り、団地全体でまちづくりを推進している。その結果生まれたのが前述で紹介した「CoCokaraひのさと」(ココカラ運営協議会)や「農場 日の里ファームクラブ」(UR都市機構)などである。
 このように、いかに住民に主体性をもたせを、他の機関を巻き込んで地域づくり、まちづくりを勧めていくかがいかに重要か、あらためて強く認識させられた。


 

2019年11月12日